今日のおすすめホラーは、1973年に公開されたホラー映画の金字塔、「エクソシスト」です。
尚、下記目次の「考察・思うこと」ではネタバレを含んでいますので、これから見る予定の方は該当箇所をすっ飛ばしてお読みください。
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ネタバレしても構わない!という方はどうぞ参考にして下さい。
また、既に見たよ!って方も「考察・思うこと」を読んで頂ければ、また別の視点を持ちながらこの映画を見ることが出来るかもしれません。
エクソシストとは

映画「エクソシスト」は1973年に公開されたホラー映画で、神父デミアンによる悪魔祓いを描いた物語です。
その後様々な派生作品が製作されるなど、ホラー映画界における二郎的な存在となっております。
取り憑かれたリーガンが階段の上からブリッジ状態で急降下してくるシーンは超有名でしょう。私自身この映画を見るずっと前からそのシーンだけは知っていましたし、そういう人も多いのではないでしょうか。
また、浦安鉄筋家族という少年ギャグ漫画でも度々パロディ化されていました。
当時の西ドイツやイギリスでは、上映後に発生した事件と映画との関連が取りざたされたされるなど、如何にその時代に影響力を持っていたかが窺える作品です。
概要&あらすじ
アメリカ・ワシントン州に住む12歳の少女・リーガンは意図せずに起きてしまう自身の奇行に悩まされていた。
初めは寝ているベッドが揺れる(揺らす)程度だったが、それは段々とエスカレートしていき、公衆の面前での失禁・卑猥な言葉を他人に投げかける・吐血しながらブリッジ状態で階段を急降下する、など日常生活に支障を来たすものにまでなっていった。
医者に見せられ、ありとあらゆる検査を受けるリーガンであったが、一向に回復が見られない。
ある日、悲鳴が聞こえて母・クリスが向かうと、そこには顔は醜悪なものに変化し、血まみれになりながら十字架で自慰行為をするリーガンがいた。家財は部屋中を飛び回っている。
ここで娘が悪魔に取り憑かれたのだと知ったクリスは、デミアン神父に悪魔祓いを依頼する。
考察・思うこと
以下、ネタバレを含みます。
長いので暇な時にお読みください。
悪魔は存在したのか?
この映画を見て私は、単なるホラー映画ではなく実はホラー寄りのサスペンスなのでは?と思いました。
いえ、ホラーはもちろんホラーなんですよ。
床をブリッジ状態で上から降りてくる例のシーンや、首が180度回るシーン。
所々で挿れられる、悪魔と思しき顔のサブリミナル。
これがホラーでないのだとしたら一体その定義は何なのかって話になります。
ですけど、それでも私がこの映画にホラー以外の要素を強く感じたことには理由があります。
というのも、果たして作中で本当に悪魔が存在していたのか?という疑問が残ったからです。
むしろ製作者側によって、あえてこういった疑問の余地が残るように作られていると思います。
作中で悪魔が存在していなかったのではと疑う根拠は、以下の3つです。
- デミアンがリーガンにただの水道水を聖水と偽ってかけたところ、酷く苦しんだこと。(本物の悪魔なら水道水が効くはずがない)
- リーガンに取り憑いているとされる悪魔がデミアンの母親の旧姓を答えるというテストに答えられなかったこと。
- 話した言語が、作中で悪魔の証拠とされる「未知の言語」ではなく、単に英語を逆再生したものだったということ
単に悪魔に憑かれた人間を描きたいだけなら上記3つの表現は全く必要ありませんよね。むしろ無い方がずっと良いでしょう。
そもそもリーガンと神父デミアンが一番最初にこの物語の中で繋がるのは、単なる“オカルトとしての悪魔祓い“としてではありませんでした。(正式に依頼しに会いに行った時はそうであったが)
手に負えないリーガンの症状に匙を投げた医者たちが勧める、“精神治療の一環としての悪魔祓い”としてでした。
医者曰く「患者は悪霊に侵入されたと思い込んでる。それを悪魔祓いで追放できたと思い込ませるのです」ということだそうです。
以上の点を踏まえると、リーガンは悪魔に取り憑かれたわけではないのではという合理的疑いが出てきます。
“悪魔祓いを描いたホラー映画”という認識でこの映画を見ているのでそのままの意味で受け取りがちですが、一度客観的に医者たち目線で見てみると、そちらも辻褄が合ってしまうのですよ。
ではこのリーガンの症状は一体なんだったんだと言うと、あくまでも私の見解になってしまいますが、
「性的な虐待を受けたリーガンがその加害者である映画監督バークをコロしてしまい、その影響で精神が分裂(もしくは精神に深刻な病が発症)。それが「悪魔」としての人格に形成されてしまった。」
という推測です。
作中に直接虐待を感じさせる描写はありませんでした。
ただ、このバークという男はパーティーの場で酒に酔っ払い、無抵抗な執事に差別紛いの侮辱の言葉をかけ続け、ケンカになりかけるシーンが描かれていました。
この事から描きたいのは、彼の本質の醜さや汚さなのではないでしょうか。
上記の(性的)虐待説が間違いなのだとしたら、このシーンは全く必要ありません。
それどころか彼が死亡する必要すらありません。
性的な虐待を推測したのは、リーガンが放つ卑猥な言動の数々です。
確かに悪魔は卑猥な言動で描かれがちですが、これはバークがリーガンに向けて、裏で行っていた言動が投影されたものなのではないでしょうか。
暴力を受けて育った子供が暴力的になる、という事はよく聞きます。
バークによる虐待が原因で作られた「悪魔」(=分裂した精神)が、皮肉にもバークを模倣した振る舞いをしてしまう。これは決しておかしな話ではないのではないでしょうか。

というよりもリーガンからしたらバークこそ悪魔そのものだったのかもしれません。
そしてラストで神父デミアンに乗り移ったとされる「悪魔」はというと、
私は「孤独に母親を死なせてしまった」というデミアンの罪悪感の具現化なのではと思います。
これも他のシーンで医者たちが「何かの罪悪感が患者に幻想を与える」という発言の裏付けがありますよね。
リーガンの目には悪魔が自分からデミアンに移動したように見えたことで、先の「悪魔祓いで追放できたと思い込ませる」ことが成功し、結果的に状態が回復したのだと考えられます。
このように、悪魔が存在しないのだとしたらこの映画は悪魔に憑かれたような精神病を患う少女の話となり、単なるホラー映画とは言い難いのかなと思ったのです。
ただ、この映画を完全に「悪魔によるものではない!」とも言い切れません。
何故なら先述のように首が回転、吐血&ブリッジでの階段降下、果ては家具が飛ぶなどのポルターガイスト(ただし「お前がやったのか?」の問いには答えていない)が起きているからです。
単に精神を病んだだけの者があんなことを出来るのでしょうか?
作中で“体重40kgの母親が子供を救うためにトラックを持ち上げた”という火事場の馬鹿力的な説明捕捉もわざわざありましたが、それだけで顔色があんな恐ろしげに変わったりするものなのか疑問が残ります。
なので、あえて疑問の余地が残るという表現を使わせて頂きました。
普通のホラー映画ならば先の医者の件でそのまま、「本当は心霊現象なのに医者達は理解しない」というパターンに進めるのですが、この映画はそこから、「医者はそういうけど本当は怪奇現象」「怪奇現象に思えるけど本当は医者の言う通り」のどちらのパターンに進んでも辻褄が合ってしまんです。
悪魔説と精神病説、どちらも疑問の余地が残るのがこの映画の面白いところだと思います。
そしてそう楽しむのであれば、もはやサスペンスの領域なのではと思いました。
単純なオカルト以外のテーマ
「科学」の概念が出来てから、宗教と科学の対立はずっと続いています。
今でこそ公然たる事実ではありますが、ガリレオ・ガリレイが唱えた地動説(科学)は当時、教会側から相当叩かれました。
それは聖書に書かれていた内容に反することだったからです。
聖書に反する内容を認めてしまうと、ひいては神の存在に対する疑問に繋がってしまいます。
このような昔から続く「宗教vs科学」という対立が「悪魔説vs精神病説」とスケールを縮小して、この映画に隠されているように思えます。
宗教に属する神父デミアンが、科学である精神科医を兼業しているのもこの対比なのでしょう。
そして宗教と科学(悪魔と精神病)、どちらもこの映画のように何かしらの疑問が残るものなんじゃないかなと思います。
これらを考えた上で映画を見るのは正直「ダルい」と思うのですが(笑、果たしてどっちなの?と考えながら見るのも面白いかと思います。

ただ1番はやっぱり、ストレートにホラー映画として見ることだよね
まとめ
いかがでしたでしょうかエクソシスト。
「思うこと・考察」ではああ言いましたが、ホラー要素は100点でしょう。
さすが何十年も語り継がれている映画だけあって、私も声をあげて驚いたりしてしまいました。

それも初めて見たわけじゃないのに
1973年に作られた映画ということで、今と比べればもちろん撮影機材など発達していなかった時代だったでしょう。
公開日だけ聞けば古臭い映画とも思うかもしれません。
ですが、実際に見て頂ければ分かるかと思います。
本当に今見ても古臭さは微塵も感じられないんですよ。現在の映画と比べても見劣りしません。Amazonパワーで画質もめちゃめちゃ綺麗でしたし。
むしろCGでは作れないような特殊メイクやギミックなんかの生々しさが、ホラー映画としては逆に加算要素だと私は思います。
ヘルレイザーとかめっちゃ気持ち悪いじゃないですか。そう言う感じ。
この映画が半世紀前に作られたのだということに改めてビックリです。
あえて挙げるとすれば、物語のスピードはもう少し早くても良かったかなーてことくらいですかね。
2時間以上あるので時間がしっかりととれる日に是非。