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人形にまつわる怖い話。「悪夢から出てきたからくり人形」

人形の怖い話

こんばんは。

本当は数日早めの更新を考えていたのですが連休でたるんでしまい、図らずも本日7月26日の更新となってしまいました。

そんな今日は、「幽霊の日」だそうです。
先日更新した「オカルト記念日」で「幽霊の日」には触れないと言っていたのですが、まさかこんなことになるなるとは…。

【雑記】7月13日は「オカルトの日」!やんわり祝いながらオカルト雑談をします

「幽霊の日」が作られた理由については例の如くあまり面白くなさそうなので触れず、せっかくなので久しぶりに怪談を書きたいと思います。

本当はもっとこういう記事をガツガツ書いていきたいのですが、如何せん「これは怖い!」と思える話に出会えることってレアなんですよね。

オカうさ
オカうさ

その分「モノホン」の話に出会えた時の喜びは計り知れません

正直、不思議な話ってだけならちょくちょく聞けることもあるんですよ。異音を聞いたとか、置いてある物がちょっと動いていただとか。
ただ、そこにはストーリー性があまり無いんですよね。どうしても、わざわざブログに書いて皆様にお伝えするには、少し盛り上がりに欠けてしまうんです。驚きはあっても怖くはありません。

今回は、そんな話が大多数を占める中で珍しく出会えた話をご紹介したいと思います。

聞いた怖い話

中部地方出身の美容師、Mさんから聞けた話。

Mさんは、小学生の頃から年に数回程度のペースで同じ夢を見続けている。
それは「からくり人形」の夢なのだという。

からくり人形というのは江戸時代に作られた機械仕掛の人形のことで、ゼンマイを巻くことによって自動で動く仕掛けの人形のことだ。中身は前輪と歯車だが、外装に人形の体をあしらうことによって、さも人形が自動で歩いているように見える。今でこそそんなものは珍しくはないが、これが作られたのは江戸時代である。当然、バッテリーで動かされているわけでもなく、当時はその技術に注目が集まった。
その中でも「茶運び人形」は特に有名で、前に出した両手にはお盆が乗せられていて、その上に茶碗を置ける仕様になっている。つまり、歩いてお茶を持ってくることが出来る人形なのだ。

Mさんの夢に出てくるのは、そんなからくり人形らしい。
真っ黒い髪のおかっぱ頭に白い肌、羽織と袴を着ていて、日本人形が持つイメージ通りの外見だ。ガチガチガチガチとゼンマイの音を立て、体を少し揺らしながら近づいてくる。
ただ、その人形が手にしているのはお盆ではない。包丁だ。人形の持つ包丁なのでもちろんそんなに大きくないが、刃の部分はまるで刺身包丁のように長く、鋭く尖っている。

その人形は夢の中でどこからともなく現れると、ジリジリとMさんのことを追い詰め、持っていた包丁で滅多刺しにしてくるのだという。
なんの恨みがあるのか、夢の中でMさんはこれでもかというくらいにこっ酷く刺され、琴切れるその瞬間にようやく目が覚めるのだそうだ。

もちろん刺された経験などないMさんだが、あの後に訪れるのは確実に「死」であり、自分でもハッキリと「殺された!」と思うのだという。いつも夢なんて見ないくせに、その夢だけは1年に数回絶対に見るのだ。
幼い頃からそんな恐ろしい夢を繰り返し見るものだから、Mさんはからくり人形のみならず、人形全てに強い恐怖感を抱いていた。

15になったMさんは、高校に進学した。
進学先は県内にある男子校で、生徒数の多い「マンモス校」として有名であった。
1学年に20近くのクラスがあったというのだから、かなりのマンモス校だろう。その学校では生徒数が多いからか、通学には学年毎に指定された違う道を使うことになっていた。
新入生であるMさんの学年が指定されていた通学路というのが、大きな墓地に両側を挟まれた暗い道を通るものであった。
その道がまた気味が悪く、男の子でありながら、その道が原因で登校がしたくなくなるほどMさんは嫌だったそうだ。

高校生活にも慣れ始めたある日。
いつものように眠りにつくと、夢を見た。通学している夢だ。
自転車通学であるMさんは家を出て、たばこ屋の角を曲がり、地元の小さい商店街を抜けて、いつもの道を走る。
しばらく走ると、両脇を墓地群に囲まれた、薄暗くて長い道が見えてくる。実際の通学路と同じだ。辺りに他の生徒は見当たらない。
気味が悪く感じたMさんはペダルを早く漕いで、急いでここを抜けようとする。嫌な道だと思った。

自転車を走らせていると、違和感を覚えた。少しであるが、いきなり荷台が重くなるのを感じたのだ。疑問に感じたMさんは特に考えず反射的に振り返ったが、すぐに後悔した。
そこには例のからくり人形が乗っていた。
動きこそしていないが、いつの間にか自転車の荷台にちょこんと座って、Mさんの方をジッと見上げている。

うわあああああ!

慌ててMさんはペダルを漕ぐ。
ただでさえ不気味な通学路、夢の中で半ベソをかきながら必死に漕いだという。
そんな揺れる自転車の上でしがみつく様子もなく、人形は荷台の上にちょこんと座り続けている。

やがて墓地を抜けると、今度は目の前に大きな門が見えてきた。大きくて古い木造のもので、なぜか直感的にお寺の門だと思ったらしい。
道を塞ぐように建っているが、実際の通学路にそんなものはない。

このままではぶつかってしまう。
慌ててブレーキを切るが、まるで手応えがない。
ぶつかるその直前で思わず目を瞑り、その瞬間に目が覚めた。見慣れた自分の部屋の中であった。
未だかつてないほどの寝汗をびっしょりとかきながら、夢だったことにMさんは安堵した。

が、ここで気づいた。体がガッチリと固まって動かない。金縛りだ。
まるで自分の体じゃないような感覚だったという。
人生で初めて体験する金縛りに恐怖心と共に驚きを感じながらも、あんな夢を見た後だったのでやたら嫌なタイミングだと思ったそうだ。

どれだけ力をいれても体は動かない。しかし、すぐに目だけは動かせることに気づいた。
首は動かせないので目だけをギョロギョロと動かし辺りをうかがっていると、薄暗い部屋の中で自分の体の上がぼんやりと光っている。
なんだと思い目を凝らすがなにぶん顔が動かせないのでよく分からない。

なんだこれは?

少しではあるが体の上で重みがあり、更にそれが動いているのを感じる。次第にぼんやりとした光は大きくなり、視界の端から小刻みに揺れた何かが見えてくる。
辺りにはガチガチガチガチと古いモーター音が鳴り響いている。
眼球を必死に動かして見ると、今までに何度も夢で見た、あのからくり人形だ!
ぼんやりとした光を放ちながら、Mさんのお腹の上から顔に向かってゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。

やばいやばいやばいやばい!!

ドッと冷や汗が出るのが分かった。動悸はかつてないほど早まり、金縛りにあいながらも口から心臓が飛び出そうになるのを感じた。

からくり人形はMさんの体の上をガチガチガチガチと音を鳴らしながらゆっくりゆっくりと上ってきて、段々とその全容は明らかになってくる。
おかっぱ頭に気持ちが悪いほどの白い肌、立派そうな袴。そして手にはいつも通り包丁が握られている。

殺される!!

身の危険を感じたMさんは、必死に振り落とそうと試みるが、悲しいかな体は動かない。人形は次第に近づいてきて遂には喉元にまで辿り着いた。
顔のすぐ目の前で人形はMさんを見下ろしている。Mさんと無機質な人形の目がばっちりと合っている。

ガチガチガチガチ。

人形は不気味なモーター音を立てながら、ゆっくりと包丁を持った手を振りかぶる。これだけ恐いのにもう目が離せない。
すると不意に、人形の口元がニタリと歪むのが見えた。その口の中には、人形には絶対与えられないであろう、まるでサメのようにギザギザに尖った歯が見えた。
それを見た瞬間にMさんはフッと意識が遠くなるのを感じ、気づいたら朝になっていたのだという。
辺りを見回してもあの人形はもういない。

初めての金縛り体験。本当に怖かった。
夢だとしてもやたら生々しい内容だったと思いながらも、無事に目を覚ますことが出来たことに、Mさんはかつて無いほどの安心を覚えた。自分はまだこうして生きている。
そして幸いなことに、人形の髪が落ちていたり小さな足跡が残っていたりだとか、昨日のことが現実だったことを示す「物的証拠」は何一つなかった。

しかし母親には、
昨日寝ている時にあんたの部屋から聞きなれない音がして気になった
と言われた。

Mさんは、それがあのモーター音でないことを祈るばかりだという。

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まとめ

今日は久しぶりに「怖い話」をしてみました。

普段みたいに伝承だとか心霊現象を紹介するのも面白いですが、やっぱり人から聞いた実体験を書くのは何にも増して楽しいです。
ちなみに没入感を壊さないように怪談の中では載せませんでしたが、カラクリ人形とはこういったものです。

機械仕掛けの人形として世界中で定評のある人形らしいのですが、こんなのに追い詰められるかと思ったら恐怖しかありません。

オカうさ
オカうさ

こんな体験をしてくれたMさんに心から感謝します

Mさんは元からそういう霊感があったのか、はたまたこれがきっかけで目覚めてしまったのか、現在も不思議な現象を体験中だそうです。
その話も機会があれば今度お話しさせて頂きたいと思います。

ちなみに「怖い話」シリーズは他にもありますので、下のタグから飛んでみて下さい。

それではまた。