こんばんは。
「千と千尋の神隠し」は皆さんご存知のことかと思います。この映画が公開された時、私はまだ小学生でした。
誰もが認める大作映画で、見終わった同級生はみんな口々に絶賛していた記憶があります。
その波に乗り遅れまいと私も早速劇場に見に行ったのですが、風邪の治りかけだったからか、はたまたあの作品の持つ少し不気味な世界観が当時の私にはまだ相いれなかったからか、映画を見終った時に吐いてしまいました。

良い思い出だね
ただ作品自体はもちろん面白く、あれから何度も見返したわけですが、ご存知のようにあの映画にはオカルト要素が満載ですよね。
タイトルにある「神隠し」がそもそもそうですし、「名前」に対するこだわり、油屋に来る客の神々、意地悪な魔法使いと怪しい魔法・・。
今日は、そんな「千と千尋の神隠し」を教科書として、オカルトの研究を進めていきたいと思います。
千と千尋の神隠しとは
まずは映画の説明です。
『千と千尋の神隠し』は2001年に公開されたジブリ映画の大ヒット作品です。
残念ながら、去年公開された「鬼滅の刃」の劇場版によって記録が塗り替えられてしまったようですが、それまでの約20年間、国内の映画興行収入の首位を死守し続けていました。
最近では映画館で再上映されたことで話題になりましたが、世界の批評家たちによって「21世紀の偉大な映画ベスト100」の4位にも選出されたという華々しい過去もあるそうですよ。海外でも人気なんですね。
物語の主人公である千尋が神々の住まう別の世界に迷い込んでしまうことによって様々な冒険と経験をし、精神的に成長する過程を描いています。
映画の中ではオカルトが一杯
さて、本題です。
冒頭でも触れたとおり、この作品の中にはオカルト、怪奇現象が一杯溢れています。
しかしそれらはジブリの創作というものではなく、実話怪談や本当にあった(として語られる)怖い話で登場することが多々ある現象なのです。つまり、実際にある「かもしれない」現象たちなのですね。
ここでは作品内における怪異を研究していきたいと思います。
神隠し
視聴者がまず初めに触れる怪現象はこれですね。神隠しです。
トンネルを抜けた先には別の世界が広がっていて、元の世界に戻ろうとしてももう戻れないのです。
私がこの作品に夢を感じるのは「神隠し」が本人視点で描かれていることです。
というのも、普段我々が聞く「神隠し」の話は人が消える現象を客観的に見たものがほとんどです。
人が消えて探したが見つからず、諦めていたところにひょっこりと戻ってきた。しかしその間どこで何をしていたのか本人ですら覚えておらず分からない、なんてそんな話ですよね。
この映画は「どこで何をしていたのか分からない」その期間を埋めてくれた(しかも美しい映像で)貴重なオカルト教材なんですよ。
私は神隠しには勝手に別の説を唱えているのですが、この映画では神隠し=異世界に飛ばされるものとして描かれています。

興味深いのは、異世界の住人たちも千尋の存在に驚いていたことです。「人間だ!」なんて言われたりしていましたよね。
一般的にそういった怪現象は、向こうが望んで起きるような気がしませんか?
例えば、家に現れた幽霊がこっちを見て驚いていたら逆にこっちがビックリしますよね。進んで接触してきたんじゃないんかいと。
そう考えると、もしかしたら彼らも私たちとの遭遇を望んでいるわけではないのかもしれませんね。
何の因果で異世界との接触が生まれてしまうのかは分かりませんが、千尋も最終的にはその記憶を失ってしまいましたし、もしかしたら忘れているだけであなたも私もそういう経験があるのかもしれませんよ。
ヒトガタ
作中でハクという名の龍が飛行中に、大量の白い紙に攻撃を受けているシーンが出てきます。
あの人の形をした白い紙を「ヒトガタ」と言います。
ヒトガタは陰陽師が使う“術”の1つで、陰陽師はこのヒトガタを使って情報収集をしたり、形代(かたしろ)といって呪いを封じたりしたものですが、まさかあんな凄まじい攻撃に使うとはお見それしました。

あのヒトガタを操っていたのは「銭婆(ぜにーば)」と呼ばれる魔法使いの老女でしたが、それだけ力のある魔法使いということだったのでしょう。
ちなみになぜこのヒトガタで呪いを封じられるのかと言うと、このヒトガタが自分自身の分身であるからです。本来は自分が受けている呪いを、代わりにこのヒトガタが受けてくれるのですね。現在でも厄除けの祈祷の際に、このヒトガタを使う神社があるようですよ。
役目を終えたヒトガタを川に流したことから「水に流す」の言葉が出来たとか出来ないとか・・。
忌み名
直接そういった説明があったわけではありませんが、作中では「忌み名」の概念が含まれていたのではと私は考えます。
忌み名とはその人の名前とは別にある本当の名前で、その名前を他人に知られると行動を支配されてしまうとされています。

千尋には恐らく本来は忌み名がありませんから、湯婆婆は「千尋」を忌み名にして「千」という通り名を無理やり作り出しました。
忌み名である「千尋」を本人が忘れしまったとしたら、完璧に湯婆婆は千尋を支配する事ができますよね。
ハクがまさにその状況でした。
彼の場合、「ハク」は通り名(隠し名)で、本名(忌み名)は「ニギハヤミコハクヌシ」でした。
恐ろしい魔女です。
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八百万の神さまたち
作中に登場する温泉施設「油屋」には八百万(やおよろづ)の神様が訪れます。
西洋が一神教であることに対し、日本においては色々な神様が存在すると考えられています。これを多神教と言います。
「八百万」というのは何も800万もの神様というわけではなく、それくらいたくさん神様はいらっしゃいますよということなんですね。
私が大人になった今思うあの映画の功績の1つは、そんな神様たちに姿を与えてあげたことだと思います。
今まで伝承で伝わるだけだったのでピンとこなかったその容姿ですが、絵になると途端にイメージが湧きますもんね。
ここではそんな神様たちを少しだけ紹介したいと思います。
龍神
ハクはこの龍神であるとされ、「こはく川」という川の神様でした。
日本では古来より水の神様は龍であるとされていたのですね。
ですから、同じ水脈を持つであろう井戸なんかには龍神様が住まうとされています。
生きた井戸をそのまま潰してはならないとされているのもそのためです。
以前書いた「家相」の記事でも、井戸を儀式もせずにそのまま潰してしまった家族がこれでもかという酷い目にあった話をしました。

川は既に埋め立てられてなくなってしまったようですが、ハクのあの凛とした龍の体と優しい性格を考えると、とても澄んだ綺麗な川だったのではないかと思います。
おしら様
千尋とエレベーターの中でたまたま居合わせる真っ白でふくよかな神様を覚えていますでしょうか。
私は初めて見た時に幼心に
「大根だ、絶対に大根の神様だ・・」
と思ったのですが、遠からず近からず。
あれは「おしら様」と言う東北地方に伝承がある神様で、農業の神様です。正確に言えば馬にまつわる農耕で、他にも養蚕だったり女性の病気の神様でもあるそうです。
ただその伝承の由来は結構ハードです。
昔々、ある農家の娘が、自分の飼っていた馬に恋をして結婚した(!)。
それを知った父親は激怒し、馬を殺してしまう。
当然娘はそれを悲しむわけだが、父親はこれが気に入らない。さらに怒った父親は死んだその馬の首を切り落としてしまった。
すると娘はその切り落とされた首に乗り、天に昇っていった。

この毒親
これがおしら様の由来だそうです。
だから馬にまつわる農耕に所縁のある神様なのですね。
おしら様についての怪談が西浦和也さんの持ちネタであり、「現代怪談 地獄めぐり」の中で語られています。
2021年7月現在kindle unlimitedで読めます。

春日様
おしら様に負けじ劣らず、とてもインパクトのあるこちらの神様。
先ほどのおしら様の隣で万歳をされていた神様です。
表情が分からず何を考えているかわからない感じがまた当時の私には不気味に思えたものです。
こちらの神様は「春日様」という名前だそうで、奈良県に実在する「春日大社」という神社がモデルになっているそうです。
春日様が付けている例のお面は、春日大社で行われる舞楽で実際に使われている物だそうですよ。
思うこと
宮崎駿監督の作品ってものすごくオカルト要素が強いですよね。
今回の「千と千尋の神隠し」だけにとどまらず「もののけ姫」も山の神や物怪(もののけ)が出て来ましたし、「トトロ」も森の主です。魔法だってしょっちゅう出てきます。
映画を作成するにあたり当然、民俗学や神話などを色々調べられたりするのでしょうが、いくらなんでも生々しすぎるというかリアルすぎる気がしてしまいます。まるで、そういう世界を知っているかのようではありませんか。

もちろんそれが才能なんでしょうが
そこで私はいつもある話を思い出すんです。
これは誰が語っていたかも覚えていませんし勝手なことは言えないのでボカして書きますが、ある大物漫画家はその昔、山の中で奇妙な世界に迷い込んだことがあるそうです。
そこでは里の人たちとは違う人たちが暮らしていて、その漫画家はその人たちから着想を得て、漫画のキャラクターを完成させたそうです。
大人になって漫画を描くようになっても忘れられなかったんですね。頭をまるでパンのように千切って食べ、中にはアンコが詰まっていた人たちのことを。
もしかしたら宮崎監督も人生のどこかで、こういった世界と直接触れる機会があったのかもしれませんね。
都市伝説どころかトンデモ話になってしまいましまが、こう考えるとまた夢がある気がします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今日は大人気映画「千と千尋の神隠し」をヒントに、ほんの少しだけオカルト現象の研究を進めることが出来ました。
皆さんも見知らぬ土地やトンネルを訪れる時には気をつけて下さい。誰もがそこから帰って来れる保証はありませんからね。
迷い込めば両親が豚になった挙句シバかれるという、こちらの世界ではあってはならない体験まですることになります。

このシーンで既に一回吐きたかったんだよね
どうやらあれは神々へのお供えである食べ物を勝手に食べてしまった「罰」だそうですが、犯行と懲罰の重みが釣り合わない気がします・・。
それではまた。