≫ 怪談読み放題はコチラから ≪

落雷が産んだウォーキング・デッド!「とある町に出たゾンビさん」

こんばんは。

以前、吉田悠軌さんの書籍「恐怖実話 怪の残滓」を紹介しました。
その記事の中で、収録されている怪談のおすすめとして「ゾンビさん」という怖い話を紹介したのを覚えていますでしょうか。

現代に生きるゾンビから下水道に住む何かの話まで・・「恐怖実話 怪の残滓」

ざっと要約すると、来院する患者さんの中には医学的に見ると完璧にその身体は死んでいるのに…という方が稀にいるというお話でした。

この話、確かに幽霊は出てきません。
ですが私は、怪談以外にもこういった「なんでこんな事が起きるのか全く分からない」という話が大好きなのです。

オカうさ
オカうさ

奇怪なことももちろんオカルトの範疇ですからね

今回、又聞きではありますが、これと似た話を聞くことができたのでご紹介したいと思います。

エピソード

とあるグローバル企業で働く営業マン、Sさんのお母さんの話。
今から七十年以上も昔のことだ。

お母さんは島根県出身だったが地元では職が見つからないので、山陰地方のとある港町のお屋敷に、使用人として出稼ぎに出たのだという。

その屋敷というのが使用人を雇うだけあって大層裕福な家庭で、地元でも名士として知られていた。
広いお屋敷に豪勢な調度品の数々と、美味しい食事。
貧しい家庭で生まれ育ったお母さんは何不自由なく見える彼らの生活を心底羨ましく思ったが、そんな家庭にも一つの問題があった。

1人娘の虚弱体質だ。
自分とそう歳も変わらないのに、そのお嬢さんはいつも寝込んでばかり。家の中を歩き回ることはあっても外に出る姿はほとんど見ることなく、お母さんが勤め始めてまもなく亡くなってしまったのだそうだ。
お抱えの医者が聴診器を当て、脈拍をとり、死亡宣告がなされた。
若すぎるお嬢さんの死に、お母さんもたいそう胸を痛めたそうだ。

さて、どんなに嘆き悲しんでも遺体をそのままにしておくわけにはいかない。
早速、葬儀の手筈が執り行われた。

今でこそ信じにくいかもしれないが当時はまだ土葬が主流で、お嬢さんもその例に漏れず白装束を着せられて、一抱えほどもある樽のような棺桶に入れられて埋葬されることになった。
その際、「向こうで困らないように」との理由から、まるでエジプトの王様のように、真珠や宝石など沢山の宝飾品を一緒に入れることになった。
現実主義のお母さんはそれをもったいないと感じたが、それはそれは豪勢な宝飾品の数々だったそうだ。

だが、エジプトの王族の墓がそうであるように、いつの時代もそういった埋蔵品にはある危険が付き纏う。盗掘だ。
当時、その辺りはその家以外一様に貧しい環境だったそうで、お嬢さんの棺桶に財物をいれたことは地元中に知れ渡っていたそうだ。

埋葬が行われた次の日、早速2人の墓荒らしが墓地に現れた。大雨が降り注ぐ、嵐の夜だったらしい。
盗掘犯たちは雨に降られながらも必死に墓を掘り返し続ける。
キツい作業ではあるしやっぱり恐ろしい気持ちもあるが、明日の暮らしを考えればやるしかない。
墓荒らし達は必死に掘り続け、埋葬してある樽が見えてきたあたりでそれは起きた。


近くの大木に雷が落ちたのだ。

こんな偶然があるだろうか。まるで、罰当たりな墓荒らしたちへの天の裁きかと思うほどの凄まじい轟音と閃光だったそうだ。
近くに雷が落ちて無事でいられる確率は分からないが、こういった手合いの生まれ持った悪運か、墓荒らしどもはケガ一つなく事なきを得ることができたそうだ。

が、次の瞬間2人は信じられないものを目にすることになる。
なんと、埋葬された娘さんが蘇り、自力で棺桶から這い上がり歩き出したのだ

これには流石の墓荒らしどもも目玉をひん剥くほど驚いた。もはや宝飾品や落雷の心配どころではない。
今の今まで死人が入っていると思っていた樽の中からその死人が這い上がり、自分たちの目の前に立っているのだから当然だろう。
あまりのショッキングな光景にこの墓荒らしどもは盗る物も盗らず、さっさと逃げ出してしまった。
そして、すっかり祟りだと思い込んだ2人がこのことを周りに話し回ったものだから、70年経った今もこうして話が残っているわけだ。

さて、当のお嬢さんはその後どうしたかと言うと、なんと、裸足のまま嵐の中を歩き回り自力で家まで帰ってきたのだそうだ。
これには先程まで娘の死を嘆いていた家族も、診断をくだした医者も、皆ひっくり返るほど驚いてその後しばらくは大騒ぎだったという。
さらに驚くべきことに、自宅に帰ってきたお嬢さんはそのあと3年間も生き長らえ、何事もなかったかのように普通に暮らしたそうだ。
病弱な体質は治らなかったが、不思議と「死んだ」前よりも元気そうな様子で、ある日ぽっくりと逝ってしまった。

そしてその後はもう2度と蘇ることはなかったそうだ。

スポンサーリンク

思うこと

私はこの話を聞いてゾッとしてしまいました。

というのも、たまに「火葬炉から叫び声が聞こえた」「火葬炉の扉の裏側に引っ掻き傷があった」なんて怪談がありますよね。
遺体を燃やしている最中にその中から気配を感じれば、誰もが勘違いか心霊現象を疑うでしょう。

ですがもし、そのどちらでもなかったとすればどうでしょうか。
もし、本当は生きている人間に死亡診断が下され、生きたまま火葬されてしまっているのだとしたらどうでしょうか。
「お爺ちゃん、安らかな死に顔だったわね」なんて慰めあっているその最中、燃えたぎる焼却炉の中でひっそりと息を吹き返し、生きながらにしてジワジワとその身体を燃やされていたのだとしたら、、、。

下手すれば心霊現象よりよっぽど恐ろしい展開だと思ってしまいました。
知られていないだけで本当はどれだけこういうケースがあるのか、考えたくもありません。

また、盗掘に遭っていたことも結果的に幸いだったと言えましょう。
もし土中深くで目を覚ましていたのなら、まず自力で出てくるのは不可能だったはずですから、、。

私の最期の瞬間は是非、一流のお医者様の二重チェックに頼りたいものです。

スポンサーリンク

まとめ

いかがでしたでしょうか。
本日はいつもとは少し違った趣向の怪談を紹介することが出来たかと思います。

毎度思うことですが、何の因果でこういうことが起きるのでしょうか。

オカうさ
オカうさ

不思議なことって本当にあるんですよね

落雷のすぐ側で蘇るその様は古き良きゾンビ映画の1シーンのようで、私が盗掘犯だったら本当に腰を抜かしてしまうでしょう。
ある種人怖にも通ずるような、そんなお話でした。

それではまた。